ギターと私(5)
さて大学に入学した私は、きっとギター部かギター・マンドリンクラブに所属したかと思うかもしれない。
ところが、どこにも所属しなかったのである。
ギター部はそもそも無い。ギタマンはあったが、私は撥弦楽器ばかりの合奏に大いに疑問を抱いていた。(ギタマンの皆さんごめんなさい)
ギター二重奏やソロマンドリンとギター伴奏とかなら別である。しかし、何十台もの撥弦楽器が一斉に音を出したら・・・・・・出された瞬間は大きな音がする、しかし瞬間である。後は減衰する一方である・・・・・・。決してその大きさを維持したり、逆に大きくすることは不可能である。トレモロとて、所詮短い音の連続であり、決して持続した音では無い。
この「出された音が減衰していく」というのが、ギター音楽の魅力の一つであると私は思っているが、合奏になるとそれが大きな欠点に変わってしまう。
私はギター・マンドリンの合奏には興味は無かった。ギターは独奏楽器であり伴奏楽器である。しかし、何十人もの合奏には向いてないと思う。
ということで、独りギターの練習に励む訳である。あっ、(1)から読んでくださった方はうすうす感づいているかも知れませんが、私はギター教室に通ったり、どこかの先生に習ったりはしていません。全くの独学です。あえて師をあげるとすれば、それはレコード(CDではありません)に録音をしてくれた巨匠達でしょう。
ただ、独りだけでは自分の実力は分からないし、他人に聴いてもらう機会も無い。コンクールにエントリーするほどの実力も度胸も無かった。幸いこの地方には「中部日本ギター協会」という組織があり、ここでは毎年「新人ギター演奏会」というのを行っていた。(この演奏会は、途中からコンクールに変わり現在に至っている)そこで私もエントリーをしてみることにした。
演奏は一人10分以内。予めオーディションが有り、そこで選ばれた者だけが名古屋市民会館のステージに立てる。独学でやってきた私にとっては良い機会である。
では選曲はどうするか。まともな曲(何のことだ?)で勝負に出たらその他大勢に埋もれてしまう。ではどうするか。余程の難曲にチャレンジしてそれを弾ききるか、あるいはあまり弾かれていない曲にチャレンジして、「あっ、変わった曲を弾くヤツがいるな」と印象に残るようにするか。
この頃私は、古典期の作品には目もくれず、20世紀の作品ばかり練習していた。また、日本人の作品にも大いに興味があり、いくつかの作品も練習していた。そこで私が選んだのは
伊福部昭(いふくべ あきら)作曲 「ギターのためのトッカータ」
ヴィラ・ロボス作曲 「練習曲第11番」
の2曲であった。
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