ギターと私(8)
名古屋のYに新しくギターコーナーと試奏室が設けられ、そこの責任者としてY氏が赴任してきた。ちょうどYが新しい手工ギターのシリーズを作り始めた頃である。
Y氏は「東海ギター友の会(この名称は「T楽器の友の会」と間違われる可能性があるため、後に「アミーゴス・デ・ギターラ」と名称変更になった。)という会をつくり、何ヶ月か置きに例会を催していた。
私も例会に参加し、当時の中部地方の若手ギタリストや愛好家達と多少の面識を得るようになった。
初めてリュートの生の音を聞いたのもこの例会である。演奏したのは現在プロとして活躍し、また私を悪の世界へと誘った(意味不明)N氏であるが、この当時は私にとっては別世界の人である。
例会や演奏会には何回か参加したが、あまり深入りすることはなかった。
どうも私は、深い人間関係を築くということが好きでは無いのである。
この後アリアリュートを入手することになるのだが、その辺の経緯は「アリアリュート」の項に書いたので割愛。
名古屋の本山にマンドリンとギターの専門店が開店した。(現在の店舗は当時の場所とは少し違う。)
私が通学に利用する地下鉄駅のすぐそばである。
この店の開店が、私のその後の音楽人生(そんな大袈裟なものでは無い)を大きく変えることになる。
早速ギターを試奏したり、楽譜を買い漁ったりという日々が始まってしまった。「文学部音楽科所属」と言われたのはこの頃である。
そして当然というべきか、新しくギターを買うことになる。現在も手元に残るラミレスⅢ世である。(やはり輸入ギター欲しかったんですよ。輸入ギターの中でも、ラミレスは価格も手頃で、当たり外れが少ないし、一時期ほどでは無いにしてもまだまだ人気のある楽器でしたからね。)
まだこの頃の私はギターに9割方浸かっていたと言ってもよいが、ある種の物足りなさも感じていた。
その物足りなさの一つは、編曲作品の多さ。
ギターの歴史を紐解いてみると、現在のような6単弦になったのは18世紀の終わり頃から19世紀の初めにかけて。純粋に現在のクラシックギターのオリジナル作品と言えるのは、これ以降の作品ということになる。(もっと厳しい言い方をすれば、クラシックギターが現在のようなスタイルになるのは、アントニオ・デ・トーレス(1817-1892)の後期モデル以降。)
いきおいレパートリーの狭さを補うために編曲をすることになる。
もう一つ。
例えば、古典期の重要なギタリストであるソルやジュリアーニにしても、作曲家としてはベートーベンやシューベルトに遥かに及ばないという事実。
これらのことが、結局私のギター離れの遠因となったことは間違い無い。
そして、あることをきっかけとしてギター界から古楽の大海へと船出していくこととなる。
ギターと私 完
次回からは「古楽と私」の予定
追記 現在Y氏はギター専門店を経営されています。
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No title
No title
ギターのレパートリーの中にはリュートからの編曲作品が結構有りますし、ルネサンスリュートとギターは調弦的にも近いので、比較的移行しやすいですね。ただ、右手のテクニックはまるっきり違いますので、逆に邪魔になることも有ります。
その辺のところは「古楽と私(仮)」に書く予定です。
ただ、最近はいきなりリュートを始める方もそれなりに増えているようですね。
私自身はというと、19世紀の音楽はあまり好きでは有りません(苦笑
交響曲や19世紀(ここ重要)のオペラは大嫌いです。年末の第九なんか絶対に聞きません。許容範囲はせいぜいモーツァルトまでで、そこから一気に「春の祭典(生贄)」に跳んだりしてます。
No title
実は私も19世紀音楽は守備範囲外だったりします。
(弦楽四重奏以外の室内楽や19世紀ギターなどの器楽は聴く事はありますが。)
特にオペラは大の苦手なのですよ・・・。
好きな人は兎も角、あの人工的で甲高い声は聴くに堪えません。
交響曲は以前は古典派の辺りを中心に聴いていましたが、
今はもう聴かないですね・・・。
基本的にルネサンスから前古典派が私のフィールドで、
それ以降はサティまで飛んでしまうでしょうか。
それと、古楽の記事楽しみにしていますよ。
No title
古楽が好きという方は「19世紀の音楽なんか嫌いだぁ」という比率が結構高そうですね。(勝手な推測)
>古楽の記事楽しみにしていますよ。
<プ・・プレッシャーが・・・
実は自分自身の事を書き始める前に、それ以前の古楽界の状況から書こうかと思ったりしています。
いろいろ調べなければならないことも多くて、どうなることやら。
No title
それはあるかも知れませんね。
ロマン派の音楽はともすれば冗長で大袈裟な表現が多いですから、
それについて行けない人は少なくないと思います。
古楽の記事については、
古楽のモダン化と云うものから切り込んでみるのも良いかも知れませんね。
リュート・フォルテとか、ガンバの奏法のヴァイオリン化とか・・・。
No title
<実はメンデルスゾ(ry
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リュートを弾かれている方は過去にギターを弾かれていた方が多いですね。
私は初めから古楽の世界に入ったクチで、
モダンに関するバックボーン等が全くありません。
(以前は普通のクラシックも若干聴いていましたが、
今はサティを除けばほぼ古楽オンリーでしょうか。)
気が付いたらバロック音楽を聴いて、リコーダーを吹いて、ガンバとリュートを弾いていた、と云う感じです。
このような事を人に話すと何故かよく珍しがられたりします。
>例えば、古典期の重要なギタリストであるソルやジュリアーニにしても、
>作曲家としてはベートーベンやシューベルトに遥かに及ばないという事実。
之は難しいですね・・・。
ただ、ギターと云う楽器の為に書いた音楽について言えば、
ソルもジュリアーニもベートーヴェンやシューベルトに匹敵する魅力的な音楽を書いているとは思います。
(しかし、ベートーヴェンもシューベルトも私にとって天敵なので、
判断がつかないきらいがありますが・・・。)