In Nomine 覚書
前回ご紹介した "In Nomine" についてもう少し詳しく。
実は前回の記事はこちらを書くための前フリだったりします。
イギリスにおいては"In Nomine" とタイトルをつけられた合奏曲やソロ曲が多数作曲されました。
ざっと思いつくだけでも
Thomas Tallis
Christopher Tye
William Byrd
Alfonso Ferrabosco
John Bull
Orlando Gibbons
Henry Purcell
など、ルネサンスからバロックにかけてのイギリスを代表する作曲家の名前が並びます。
その総数は60曲近くになると言われています。
まずその中からいくつか例をあげてみましょう。
昨日の John Taverner より少し後の世代、トマス・タリス (Thomas Tallis ; C.1505-1585)
一気に跳んで、イギリスのバロックを代表する作曲家 ヘンリー・パーセル (Henry Purcell ; 1659-1695)
(イメージがありません ^ ^;)
何の予備知識も無しにこれらの曲を聞いて、同じ "In Nomine" という題名がつき、さらに「同じ曲を元にしている」と言われて不思議に思った方もいらっしゃるのではないかと思います。
雰囲気や和声(というのは間違いですが)は似ているけれども、旋律は明らかに異なりますよね。
では楽譜をみてみることにしましょう。
実は前回の記事はこちらを書くための前フリだったりします。
イギリスにおいては"In Nomine" とタイトルをつけられた合奏曲やソロ曲が多数作曲されました。
ざっと思いつくだけでも
Thomas Tallis
Christopher Tye
William Byrd
Alfonso Ferrabosco
John Bull
Orlando Gibbons
Henry Purcell
など、ルネサンスからバロックにかけてのイギリスを代表する作曲家の名前が並びます。
その総数は60曲近くになると言われています。
まずその中からいくつか例をあげてみましょう。
昨日の John Taverner より少し後の世代、トマス・タリス (Thomas Tallis ; C.1505-1585)
一気に跳んで、イギリスのバロックを代表する作曲家 ヘンリー・パーセル (Henry Purcell ; 1659-1695)
(イメージがありません ^ ^;)
何の予備知識も無しにこれらの曲を聞いて、同じ "In Nomine" という題名がつき、さらに「同じ曲を元にしている」と言われて不思議に思った方もいらっしゃるのではないかと思います。
雰囲気や和声(というのは間違いですが)は似ているけれども、旋律は明らかに異なりますよね。
では楽譜をみてみることにしましょう。
Taverner、Tallis、Purcellの作品の冒頭部です。(名前クリック)
我々現代人はどうしても一番上の旋律に耳が行ってしまいますが、実は本体は違うところにあります。
Taverner と Tallis は上から2番目、Purcell では上から3番目のパートが本体です。
このパートを、音価を無視して書くと次のようになります。

この旋律こそが "Gloria tibi Trinitas" の Cantus Firmus(定旋律)で、起源はおそらくグレゴリア聖歌にあると思います。(この部分に関してはまだ確信が持てません)。
midiファイルを聞くにはプラグインが必要です。
そしてこの定旋律上に独自の旋律を付加していった作品群なので、本来は "Gloria tibi Trinitas" と呼ばれるべきなのですが、Taverner のミサ曲の印象が余程強かったのでしょう、"In Nomine" と呼ばれるようになってしまったようです。
実は20世紀の音楽学者の間で、なぜ "In Nomine" と呼ばれるのか謎だったようです。そして調べていくうちにTaverner の作品に辿り着いたとか・・・
さてリュート作品ではどうでしょう。
実は、はっきりと「タヴァナーのインノミネ」と書かれた作品があります。

"The Mynshall Lute Book" に含まれる曲ですが、同じような曲が "The Marsh Lute Book" 等にも見られます。
そして忘れてはならないのは John Dowland。
Dowland のファンシー、ポールトンの整理番号で4番にあたる曲がこの定旋律に基づいています。
こちらです。
ダウランドは一番上にこの定旋律を持ってきています。
微妙に異なる部分もありますがかなり忠実になぞっていますね。
そして、一旦は途絶えた "In Nomine" ですが、現代になって、再び作曲に挑戦している人もいるようです。
http://imslp.org/wiki/Category:Grayson,_Martin
我々現代人はどうしても一番上の旋律に耳が行ってしまいますが、実は本体は違うところにあります。
Taverner と Tallis は上から2番目、Purcell では上から3番目のパートが本体です。
このパートを、音価を無視して書くと次のようになります。

この旋律こそが "Gloria tibi Trinitas" の Cantus Firmus(定旋律)で、起源はおそらくグレゴリア聖歌にあると思います。(この部分に関してはまだ確信が持てません)。
そしてこの定旋律上に独自の旋律を付加していった作品群なので、本来は "Gloria tibi Trinitas" と呼ばれるべきなのですが、Taverner のミサ曲の印象が余程強かったのでしょう、"In Nomine" と呼ばれるようになってしまったようです。
実は20世紀の音楽学者の間で、なぜ "In Nomine" と呼ばれるのか謎だったようです。そして調べていくうちにTaverner の作品に辿り着いたとか・・・
さてリュート作品ではどうでしょう。
実は、はっきりと「タヴァナーのインノミネ」と書かれた作品があります。

"The Mynshall Lute Book" に含まれる曲ですが、同じような曲が "The Marsh Lute Book" 等にも見られます。
そして忘れてはならないのは John Dowland。
Dowland のファンシー、ポールトンの整理番号で4番にあたる曲がこの定旋律に基づいています。
こちらです。
ダウランドは一番上にこの定旋律を持ってきています。
微妙に異なる部分もありますがかなり忠実になぞっていますね。
そして、一旦は途絶えた "In Nomine" ですが、現代になって、再び作曲に挑戦している人もいるようです。
http://imslp.org/wiki/Category:Grayson,_Martin
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コメント
No title
No title
キフツゲートさん、久しぶりです。
確かにルーリーのダウランド全集には起源不明と解説されていますね。
LP版は1980年発売ですので、その時の解説をそのまま使っている可能性があります。
実は中公新書から出ている「中世・ルネサンスの音楽」(皆川達夫 1977年)に、既にタヴァナーのグロリア・ティビ・トリニタスへの言及がありますので、それ以前には判明していたことになります。
ダウランド全集の解説は、Hさんがそのことを知らずに書いたのだと思います。
実はこの人、他のあるレコードの解説で「ホスキン・デス・プレス」などという、聞いたことも無い作曲家をでっちあげた前科がありますので要注意です。
確かにルーリーのダウランド全集には起源不明と解説されていますね。
LP版は1980年発売ですので、その時の解説をそのまま使っている可能性があります。
実は中公新書から出ている「中世・ルネサンスの音楽」(皆川達夫 1977年)に、既にタヴァナーのグロリア・ティビ・トリニタスへの言及がありますので、それ以前には判明していたことになります。
ダウランド全集の解説は、Hさんがそのことを知らずに書いたのだと思います。
実はこの人、他のあるレコードの解説で「ホスキン・デス・プレス」などという、聞いたことも無い作曲家をでっちあげた前科がありますので要注意です。
No title
ご教授ありがとうございます。
さすが皆川先生です。
そういえば家に「洋楽事始」のCDがありました。
解説をもう一度読んでみたくなりました。
ホスキン・デス・プレスは笑えますね。
多分英文科を卒業された、英語だけ勉強された方の直訳でしょうね。
べつに何か国語も話せる必要はないのかも知れませんが、
日本の語学教育の水準の低さを感じさせます。
さすが皆川先生です。
そういえば家に「洋楽事始」のCDがありました。
解説をもう一度読んでみたくなりました。
ホスキン・デス・プレスは笑えますね。
多分英文科を卒業された、英語だけ勉強された方の直訳でしょうね。
べつに何か国語も話せる必要はないのかも知れませんが、
日本の語学教育の水準の低さを感じさせます。
No title
キフツゲートさん、こんばんは。
Hさんの名誉のために少し書いておきます。
ギター関係、特にフラメンコや中南米の音楽に関しては、相当な知識をお持ちです。また日本でのリュート普及に一役かってきたことも確かです。
ただ古楽系の人では無いので、その辺りの知識は少々怪しいものがあるとは感じてます。
イン・ノミネの由来発見について、もし何かお分かりになりましたら、宜しくご教授ください。
Hさんの名誉のために少し書いておきます。
ギター関係、特にフラメンコや中南米の音楽に関しては、相当な知識をお持ちです。また日本でのリュート普及に一役かってきたことも確かです。
ただ古楽系の人では無いので、その辺りの知識は少々怪しいものがあるとは感じてます。
イン・ノミネの由来発見について、もし何かお分かりになりましたら、宜しくご教授ください。
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確かタリス・スコラーズによるJohn Taverner の "Gloria tibi Trinitas"のCD解説で私は初めて知った覚えがあります。